という問いに対して、
そして
という視点から考えます。
なお、この記事は、過去に掲載した下記の記事の内容から要点を抽出して、キリスト教のことをよく知らない人やキリスト教初心者の方にも分かりやすいかたちになるように、簡潔に要約したダイジェスト版(まとめ)です(内容を加筆修正しているところもあります)。
興味を持たれた方は是非、上記の記事もご一読ください。
原本と写本の関係性
まず最初に、
という問いがあると思います。
古代には現代と違って「紙」が普及しておらず、パピルスや羊皮紙、木簡など傷みやすい素材に書かれていました。
物は時間とともに劣化するので、最初に書かれた
聖書も例外ではありません。
従って、残念ながら、
そこで重要なのが
です。
という繰り返しで、原文が現在に至るまで伝わってきました。
しかしながら、印刷技術も複写機もなかった古代・中世には、すべて手書きで文章を写していったため、写す人のミスや意図的な変更が生じる可能性があります。
このため、
が問題となります。
写本に入り得るミスと善意による直し
写本は人が一文字ずつ手で書き写すため、無意識のミスが必ず発生します。
代表的なものは:
- 重字脱落(繰り返しが抜ける)
- 重複複写(同じ箇所が重なる)
- 記憶違い(似た表現を思い出して間違う)
- 脚韻による脱落(同じ語尾に挟まれた部分が抜ける)
- 類似文字の混同
- 注釈を本文に取り込んでしまう
などです。また、
文法や分かりにくい表現を訂正したり、
神学的に理解しやすく改めたりといった、
善意による「直し」もあります。
原本保存・再現のための比較材料の重要性
写本にはこのような無意識のミスや善意による直しが存在するため、「原本(作者が書いたそのままの本文)」を完全に保存して現在に届ける、即ち、
ことと言えます。
そこで重要になるのが、
です。
たくさんの異なる写本が残っていれば、どこに差異があるか比べることができ、「より原本に近い」本文を探し出すことが可能になります。
写本の質は「誰が、どこで、どの文化圏で写したか」に影響されます。
「質」の異なる写本を比べることによって、原文に近づくことが可能になります。
なお、写本の「質」の違いを系統立てて分析するためには、現存する写本の数がある程度多くなければなりません(聖書以外の古文書では、そもそも、「質」の違いを比べられるほど写本の数が多くないと思われます)。
聖書写本の数・年代・タイプ
なものと言えます。実際、
です。
対して、ホメロスや古代ローマの作品は、写本数が数百から1800点程度とずっと少なく、最古の写本と原本との隔たりは少なくて100年、長いものでは1000年ほどになります。
最古の写本と原本との隔たりが少ないほど、その写本の内容は原本により近いものと考えられます。
従って、そうした写本を用いて再現された文書の信頼度・信憑性は高くなります。
旧約聖書では紀元前3世紀ごろから紀元1世紀にわたって数種類の写本タイプがみられ、やがてマソラ本文の原型が支配的になりました。
そして、紀元100年から300年にかけて写本の厳密化(写本筆写者たちによる標準化)が進みました。
結果として、現代の私たちが手にする
と評価されています。
新約聖書の写本では、時代ごと・地域ごとに特徴的な本文(text)タイプが現れます。代表的なものとして、「アレクサンドリア式本文(原文に忠実に残そうとしたとされる)」、「西洋式本文(自由に改変が見られる)」および「ビザンチン式本文(洗練された文体で書かれた)」があります。
特徴の異なるこれらの写本を比べることで、原文に限りなく近づくことが可能になります。
まとめ
聖書の原本(オリジナルの本文)は残っていませんが、それは聖書に限らず、古典全般に共通する事情でもあります。
また、人の手で書き写すことによる誤りや善意の訂正は確かに存在します。
けれども、
と考えられます。結果的に、
と言えます。