十字架にかけられたイエス・キリストは、宗教画や映画、物語で何度も描かれてきました。
しかし
と問われると、多くの人ははっきり答えられないのではないでしょうか。
実は、イエスの死にはローマ帝国総督とユダヤ教指導者の思惑も深く関係していました。
この記事では、当時の政治的・宗教的な状況をもとに、イエスの十字架刑の裏側にある真実に迫ります。
なお、この記事は、過去に掲載した下記の記事の内容から要点を抽出して、キリスト教のことをよく知らない人やキリスト教初心者の方にも分かりやすいかたちになるように、簡潔に要約したダイジェスト版(まとめ)です(内容を加筆修正しているところもあります)。

興味を持たれた方は是非、上記の記事もご一読ください。
目次
処刑にかかわった人たち
まず、イエスの処刑に関わった主な人物を紹介します。
ポンテオ・ピラト(Pontius Pilate)
ローマ帝国のユダヤ地方の総督で、ローマ皇帝ティベリウスから任命されました。彼は軍の指揮権と民衆に対する生殺与奪権を持ち、イエスを十字架刑にする最終的責任を負いました。
大祭司カヤパ(カイアファ/Caiaphas)
ユダヤ教の最高権威の一人。イエスに対する冒涜罪の判決を主導し、イエスをユダヤ教法的な罪で裁く中心人物です。
祭司長・律法学者・長老たち
ユダヤ教の指導者層で、神殿の運営や律法の解釈において権威を持つ人たち。イエスの教えが民衆に受け入れられつつあったため、彼らの宗教的・社会的地位が脅かされると感じていました。
政治的理由:ローマ帝国の支配・治安維持
イエスが処刑された背景には、当時のローマ支配と治安政策の事情が深く関わります。
過越祭の混雑と秩序の維持
過越祭はユダヤ教の三大祭りの一つで、ユダヤ人が各地からエルサレムに集まる時期です。
祭りの期間中は街が非常に混雑し、暴動などの混乱が起きやすい状況になります。
ローマ総督ピラトは、過去にもエルサレムでの騒動で皇帝から叱責された経験があり、再び問題を起こしたくありませんでした。
そのような状況下で祭司長たちは、ピラトの前でイエスを「民を惑わす者」「自分は王キリストだ」と主張する者だと告発しました。
ローマにとって、王を名乗る人物は政府の安定・秩序を脅かす存在です。
ピラトとしては黙って見過ごす訳にはいきません。
これが十字架刑を認めさせる政治的な大きな動機の一つでした。
自己保身としての死刑執行
聖書の記述では、ピラトはイエスを釈放しようと何度か試みました。
しかし群衆が「十字架につけろ」と叫び、指導者層もその声をあおることで、ピラトは民衆の声を無視できなくなります。
暴動や混乱が発生すると、自分の地位が失われる恐れがあったため、最終的にイエスを処刑する決断をせざるを得ませんでした。
ここにピラトの「自己保身」がはっきりと浮かび上がります。
ユダヤ教的理由:ユダヤ教内部の教義・権威保護
宗教指導者たちはユダヤ教内部の教義と権威を守るため、イエスを危険視していました。
冒涜罪と宗教的教えへの挑戦
ユダヤ教指導者たちは、イエスが「神だけが持つ権威(罪を赦すなど)」を主張することを冒涜と捉え、イエスを裁きます。
さらに、イエスは神殿で商売や儀式に関連する行動を批判し、教えを説くことで群衆の人気を得ていました。
このため、神殿運営に関わる指導者層の権威に挑戦する存在として、宗教的指導者たちにとってイエスは無視できない脅威となっていました。
自己保身としての暗殺計画
イエスの教えが広まり、人々が彼を信じ始めれば、ユダヤ教指導者たちは自分たちの宗教指導者としての地位や権威を失ってしまいます。
また、民衆がイエスの指導の下でローマ帝国に反乱を起こしでもすれば、その責任を取らされることとなります。
そうなれば彼らは政治的な地位や立場をも失ってしまうことになります。
そうなってしまう前に、イエスを早いうちに排除しようとする動きが彼らの中にはありました。
ここに宗教指導者たちの「自己保身」が見て取れます。
まとめ―背後にあった本当の動機:自己保身
イエスが十字架刑に処された直接の表向き理由は「冒涜罪」と「反逆罪」でした。
しかし、その根底にあったのは指導者たちの自己保身です。
- ピラトは統治者としての地位と秩序を守るためにイエスの処刑を認めた
- 宗教指導者は自分たちの地位と権威を守るためにイエスを排除した
つまり
のです。