【英語での聖書勉強のススメ】英語で聖書(キリスト教)を学ぶ利点と注意点

始めにいきなりの注意事項

今回の記事で対象としているのは

聖書を学びたい人

です。「英語を学ぶために聖書を読みたい人」ではありませんので、予めご了承ください。

別の言い方をすれば、そこそこの英語力がある方を対象に

是非とも英語で聖書を学んでみましょう!少し注意してほしいことがありますが、それを補って余りある良いこと(利点)がたくさんありますよ!

というのが、今回特にお伝えしたいことです。

ここで誰もが気になるのが

「そこそこの英語力」って、どの程度の「英語力」のことを言ってるの?

だと思います。が、それはズバリ、

英語圏に留学したことがある

もしくは

英語圏に留学できる

ほどの英語力です。しかし、それと同時に、

英語圏に留学できるほどの英語力をつけたいと思っている方

にもこの記事を読んで頂いて、英語圏で聖書(キリスト教)を学ぶことを真剣に考えるきっかけになることも願っています。

どの英語訳の聖書を買えばよいかでお悩みの方は下記の記事をご覧ください。

英語の聖書はどれがおすすめ?ー翻訳の種類と特徴による比較・分類ー
英語の聖書の種類と特徴を大まかに比較・分類した上で、「キリスト教の教えよりも英語に興味がある方」「キリスト教の教えを原典に忠実な英語で学びたい方」「なにはともあれ英語で聖書を読んでみたい方」を対象に、個人的なおすすめ英語訳聖書をそれぞれ紹介します。

では、前置きはこのくらいにして、今回の話の流れは以下の通り。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告

英語で聖書を学ぶ利点①:文献・資料が多い

まず最初に紹介したい英語で聖書を学ぶ利点は、英語で書かれた文献・資料の多さ

どれくらいの多さかどうか、正直、はっきりとした数字は分かりません。

が、非常に単純に考えて、英語と日本語の文献・資料の数の割合は、英語圏と日本のクリスチャンの数の割合に近いのではないかと思います(実際は、英語圏でなくても文献・資料を英語で書く人はたくさんいますので、英語で書かれたものの数はもっと多いと思われます)。

2013年において、英語圏(英語を第一言語として大多数が話している国々)の人口の総和は約4億5千万人。1

その中で、2006年時点ですが、英語圏におけるクリスチャンの割合はプロテスタントが37.65%、カトリックが41.85%ですので、合わせると約80%がクリスチャンとなります。2

つまり、かなり大雑把ですが、英語圏のクリスチャン人口は約3億6千万人

他方、2014年において、日本のクリスチャン(プロテスタントとカトリック)の人口は約101万人、全人口比では0.81%とされています。3

従って、

英語圏のクリスチャン人口は日本のクリスチャン人口のおよそ360倍

となり、かなりの単純計算ではありますが、

英語の文献・資料は日本語の文献・資料に比べて約360倍も多い

ということになります。

これは例えば、クリスチャン関係の書籍が日本語で一冊出版される度に、英語では360冊の書籍が出版されていることです。

この「360倍」という数字の信憑性はさておき、キリスト教に関する情報量は日本語よりも英語によるものの方が圧倒的に多いことは間違いありません。

英語で聖書を学ぶ利点②:文献・資料が安い

経済学に詳しくない私でも、たくさんのものが市場にあふれれば(売る人がたくさんいれば)、その販売価格は下がってくるという原理は分かります(需要と供給の原理)。

逆に、市場に出回る量が少なければ(買う人がたくさんいれば)、販売価格は上がりやすくなります。

これと同じことが英語の文献・資料と日本語の文献・資料の間にも言えます。

前節でみたように、英語の文献・資料は日本語のものより圧倒的に数量が多いです(売る人が多い)ので、販売価格は安くなります

実際、英語の聖書は、これまたざっくりですが、ペーパーバックであれば新品で1000円前後から選ぶことができます。4ちなみに、キンドルではタダというのもあるようです(2018年12月時点)。5

対して、日本語の聖書は一般的なもの(ソフトカバー)で3000円台からです。6

また、聖書の内容を詳しく説明してくれる「注解書」というものがありますが、この注解書に関しては英語のものと日本語のものの種類と値段の差が更に激しくなります(日本語では書く人も買う人も極端に少なくなるため)。

実際、Wikipedia情報ですが、日本語の(代表的な)注解書の種類は日本語オリジナルだと10個ほど(シリーズ物も一つと数えています)、英語を翻訳したもので5つくらいのようです(2018年12月現在)。7

対して、英語の注解書はこちらのサイトで扱っているだけで256個あります(2018年12月現在)。

値段はもちろんピンキリですが、日本で代表的な注解書だと思われる「新聖書注解」(全7巻)は中古で一冊3000-9000円のようですので、全7巻揃えると大体4万5千円くらい。8

対して、英語の注解書で代表的な"Word Biblical Commentary"(全61巻)という注解書は新品(ハードカバー)で一冊30ドル台から購入できます。9

「全61巻」ということからも分かると思いますが、一冊一冊の内容は非常に細かい(大体400-600頁)ものですので、30ドル払っても決して損はしない内容です。

が、さらに驚くべきは電子書籍の場合。

専用の無料アプリをインストールする必要はありますが、全61巻が1199.99ドルで購入できます(2018年12月現在)。ので、一冊当たり約20ドルになります。

しかも、です。

結構な頻度で(50%以上の)値引きがされますので、セール時に購入すると、場合によっては、一冊当たり10ドル以下!ということもあります(ちなみに、私が購入した時には全59巻が299.99ドルでしたので、一冊当たり約5ドルでした)。

英語で聖書を学ぶ利点③:文献・資料が新しい

文献・資料の数の多さは安さだけでなく新しさにも影響を与えます。

この新しさが痛いほど表れてくるのが日本語に翻訳した文献・資料

日本におけるキリスト教関連の文献・資料は、外国語で書かれたものを日本語に翻訳したものが結構な割合で存在します(日本語オリジナルのものの数が少ないため)。

しかし、当然、翻訳作業には時間がかかりますし、そもそものところ、どの本を翻訳するかを決めるのにも時間がかかります(大抵の場合、ある程度の評判・評価が分かってから、その本を翻訳するかどうかを決めるはずですので、検討の時点で書籍の出版から少なくとも1-2年は経っていることになります)。

実際、日本語に翻訳されている注解書で「ティンデル聖書注解」(全48巻)というものがあります。

こちらは英語で書かれた

  • Tyndale Old Testament Commentaries(全28巻)
  • Tyndale New Testament Commentaries(全20巻)

を日本語に訳したものですが、英語で一番古いものは1964年、一番新しいものでも1999年に出版されています(2000年以降の改訂版を除きます)。10

これら1964年から1999年に英語で書かれたものが日本語に翻訳されたのは2003-2014年。11

つまり、

ものによっては、30-40年前に英語で書かれた内容のものが日本語では新書として販売される

ことになります。

ちなみに、日本語の「ティンデル聖書注解」の全巻セットは187,000円+税となっています(2018年12月現在)。12

が、英語の電子書籍では全49巻(元々の48巻に「エステル記」の改訂版が追加されている)が199.99ドルで購入できます(2018年12月現在)。しかも、セール時にはこれからさらに50%程度割引されますので、文字通り桁違いの安さ!買わない手はありません。

英語で聖書を学ぶ注意点①:文化の違いに注意

英語で書かれたキリスト教関連の文献・資料は日本語で書かれたものよりも数が多くて安くて新しい・・・

となれば、あとの問題は英語力だけ!

と言いたくなりますが、実は問題となるのは英語力だけではありません。

確かに、英語で書かれた資料・文献は圧倒的に数が多くて安くて新しいのです。が、そこに書かれている内容が直ぐに日本のキリスト教界に適用できるかというと、答えは、恐らく

ケースバイケース

もしくは

直ぐに適用できるところもあるけど、ほとんどは参考程度

だと思います。というのも、

土台となるキリスト教(宗教的)文化が英語圏と日本でかなり異なるから

恐らく、一番分かりやすいのは「神」についての概念の違いだと思います。

欧米などの英語圏は、歴史的な経緯からキリスト教の影響が根強いですので、「神」というとキリスト教を信じていようがいまいが、大抵の人は「唯一まことの神」を思い浮かべると思います。

対して、日本では「八百万の神」が当たり前ですから、「神」というと「どの神様のこと?」となってしまいます。

端的に言えば、

「一神教」と「多神教」という神概念の違い

がある訳です。このため、英語圏で書物を書く人は、わざわざ多神教の神を考えながら物事を考えたり説明したりはしませんので、その部分はこちらが補う必要があります。

また、英語圏(主に欧米)と日本の文化の違いとして、

「個人主義」と「集団主義」の違い

も挙げられます。もちろん、最近は日本も欧米の影響をかなり受けてきていますので、個人主義と集団主義の違いは以前ほどは大きくないかもしれません。が、しかし、根本的なところではまだまだ考え方の隔たりがあると感じています。

こうした文化の違いのため、欧米のキリスト教界でベストセラーとなった本が日本のキリスト教界で広く受け入れられるとは限らないという現象が生じます。

そして、その多くは、出版当初は内容の目新しさからある程度売れたとしても、一時の「ブーム」「ムーブメント」で終わってしまうのが現状だと思います(これはキリスト教界だけに限った話ではないかもしれませんが)。

ここで誤解しないでいただきたいこと。それは、

英語で書かれた文献・資料が全く役に立たない訳では、もちろん、ない!

ということ。ただ、

「外国の人が言っているから間違いがない」もしくは「外国で上手くいったから日本でも上手くいく」とは限らない

ということ。大事なことは

英語で書かれている内容を鵜呑みにすることなく、内容を吟味・精査して、日本の文化により良くあった形に焼き直す、もしくは(使えるところだけを使って)新たに作り直す

ことだと思っています。でも、実はこの

外国の文化の良いところを抽出(真似)して、日本独自なものに作り変える

というのは、日本人が非常に得意なことだとも思いますので、それをキリスト教についてもやればよいはず、なのですが…余りに「日本独自なもの」に変えてしまうと本来のキリスト教とは全くの別物になってしまいますので、かなりの労力と注意が必要な作業となります。

英語で聖書を学ぶ注意点②:専門用語に注意


英語の文献・資料は日本語の文献・資料に比べて分量が豊富で、値段も安くて、(特に翻訳されているものは)内容も新しいため、前節で挙げた「文化の違い」に注意していれば、英語で聖書(キリスト教)を学ぶのは非常に有益ですし、個人的にも強くお勧めします。

が、しかし、もう一つだけ、英語で聖書(キリスト教)を学ぶ際の注意点があります。それはキリスト教の専門用語

専門用語というのは、キリスト教に限らず、どんな分野でも必ず出て来るもので、それぞれの言語で独特な言い回しが用いられます。

例えば、物理学で「超弦(ちょうげん)理論」という理論がありますが、それは英語で"Superstring theory"と言います。しかし、もちろん、物理に興味のない人にとっては日本語であろうが英語であろうが全く意味不明な言葉です。

同様に、キリスト教用語としては、例えば日本語で「携挙(けいきょ)」、英語で"Rapture"という言葉があります。両者共にキリスト教に馴染みのない人には全く意味が分からない言葉です。

このような専門用語はもちろん、専門書には何度となく出てきますので、専門書を読んでいるうちに自然と覚えてきます。

しかしながら、もし英語の専門書ばかり読んで日本語の専門書を読まなかったとすれば、日本語の専門用語がほとんど分からなくなるという状況に陥りかねません(恥ずかしながら、私は日本語の専門用語がまだかなり怪しい状態です…)。

とはいえもちろん、専門用語が分からないとしても、日常生活でははまず問題ありません。ただ、牧師同士の会話(議論)やブログなどで小難しい話を書こうとするときには少し困ることがあるかもしれません。

また、日本語の文献・資料を読むこと無しには、前節で考えた「文化の違い」を考慮しつつ日本独自なものに作り変えることはまず不可能だとも思います。

以上のようなことから、英語の文献・資料だけでなく日本語の文献・資料もあわせて読むことは非常に大切だと思います。

まとめ

今回は既にある程度の英語力がある方を対象に「英語で聖書(キリスト教)を学ぶ利点と注意点」を紹介しました。想定している英語力は

  • 英語圏に留学したことがある
  • 英語圏に留学できる

レベルです。

英語で聖書(キリスト教)を学ぶ利点としては

  • 文献・資料が多い
  • 文献・資料が安い
  • 文献・資料が新しい

ことが挙げられます。従って、ここまでの話だけなら

聖書(キリスト教)を勉強する絶対に英語だ!

と言いたくなります。が、残念ながら、良いことばかりではなく、注意することが(少なくとも)二つあります。その一つ目は、

「外国の人が言っているから間違いがない」もしくは「外国で上手くいったから日本でも上手くいく」とは限らない

ということ。これはつまり、

英語で書かれている内容を鵜呑みにすることなく、内容を吟味・精査して、日本の文化により良くあった形に焼き直す、もしくは(使えるところだけを使って)新たに作り直す

ことが非常に大事だと言えます。

そのため(そして、日本語の専門用語に強くなるため)にも、二つ目の注意点として、

英語の文献・資料だけでなく日本語の文献・資料もあわせて読む

ことがとても大切になってきます。

以上、長々と書いてきましたが、英語に自信のある方には是非とも英語で聖書(キリスト教)を学んで頂きたいと思います。

注釈

  1. https://www.nationmaster.com/country-info/groups/English-speaking-countries
  2. https://www.nationmaster.com/country-info/groups/English-speaking-countries/Religion/Religions
  3. 日本宣教170➤200プロジェクト「データブック 日本宣教のこれからが見えてくる ―キリスト教の30年後を読む」(東京: いのちのことば社、2016年)12頁。
  4. https://www.amazon.co.jp/s/s/ref=sr_nr_p_n_srvg_2374648051_0?fst=as%3Aoff&rh=n%3A52033011%2Ck%3Aholy+bible%2Cp_n_feature_two_browse-bin%3A2265659051%2Cp_n_srvg_2374648051%3A87853051&keywords=holy+bible&ie=UTF8&qid=1544359564&rnid=2374648051
  5. https://www.amazon.co.jp/s/gp/search/ref=sr_nr_p_n_srvg_2374648051_0?fst=as%3Aoff&rh=n%3A52033011%2Ck%3Aholy+bible%2Cp_n_feature_two_browse-bin%3A2265659051%2Cp_n_srvg_2374648051%3A2450764051&keywords=holy+bible&ie=UTF8&qid=1544359764
  6. https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss_2?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%E8%81%96%E6%9B%B8%E3%80%80%E5%B0%8F%E5%9E%8B&rh=n%3A465392%2Ck%3A%E8%81%96%E6%9B%B8%E3%80%80%E5%B0%8F%E5%9E%8B
  7. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%81%96%E6%9B%B8%E6%B3%A8%E8%A7%A3%E6%9B%B8
  8. https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_ss_ime_i_1_7?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Daps&field-keywords=%E6%96%B0%E8%81%96%E6%9B%B8%E6%B3%A8%E8%A7%A3&rh=i%3Aaps%2Ck%3A%E6%96%B0%E8%81%96%E6%9B%B8%E6%B3%A8%E8%A7%A3
  9. https://www.amazon.com/s/ref=nb_sb_noss?url=search-alias%3Dstripbooks-intl-ship&field-keywords=word+biblical+commentary
  10. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E8%81%96%E6%9B%B8%E6%B3%A8%E8%A7%A3
  11. その間、英語のオリジナルの方は別の作者による改訂版が出ているものもありますが、日本語にはまだ訳されていないようです(例えば「詩編」の注解書はDerek KidnerのものがTremper Longman IIIによって改訂されています)。詳細な一覧は下記を参照。https://en.wikipedia.org/wiki/Tyndale_Old_Testament_Commentaries; https://en.wikipedia.org/wiki/Tyndale_New_Testament_Commentaries
  12. https://www.kyobunkwan.co.jp/xbook/archives/73928
スポンサーリンク
レクタングル(大)広告