少し前に書いた下記の記事では、初めて聖書を買おうとする人を対象にして、代表的な日本語訳聖書の特徴を比較しながら、私が個人的にお薦めする日本語訳聖書を紹介しました。
今回は、
と思われる野心家(?)の皆様を対象に、個人的にお薦めしたい英語訳聖書を紹介します。
でも、その前にまずは英語訳の聖書を翻訳の種類と特徴に応じて大まかに分類・比較してみます。
なお、英語に自信のある方には是非とも英語で聖書を読んで(学んで)頂きたいと思っています。英語で聖書を学ぶ利点と注意点について、興味のある方は下記の記事をご覧ください。
今回の話の流れは以下の通り。
翻訳の大まかな種類
聖書に限らず、ある言語を別の言語に翻訳する時、その翻訳の仕方は大きく以下の三つに分けられます。1
- 逐語訳
- 意訳
- パラフレーズ訳
逐語訳は直訳または形式的等価翻訳(formal equivalent translation)とも呼ばれ、元の言語を一語一語、(できるだけ)忠実に置き換えていく翻訳です。
このため、時には、訳された文章の語順が文法的におかしなものになったり、表現が非常に分かりにくくなったりします。
極端な例ですが、
という英語の文章を日本語に逐語訳すると
となります。
元の言葉の語順や言い回しをできるだけ残しながらも、訳された言語においても無理なく自然な表現になるように訳そうとするのが意訳または機能的等価翻訳(functional equivalent translation)や動的等価翻訳(dynamic equivalent translation)と呼ばれる訳し方です。
例えば、これまた極端な例ですが、
という英語の慣用表現は、逐語訳(直訳)すると
となりますが、意訳では
となります。
最後に、元の文章の概念は残しつつも、語順や言い回しを(ほぼ丸ごと)書き換えてしまう翻訳方法をパラフレーズ訳または自由翻訳(free translation)と言います。
これまた例えばですが、
という文章の逐語訳は
意訳では
パラフレーズ訳では(前後の文脈によりますが例えば)
となります。
上記の例からも分かると思いますが、
が、読みやすさと引き換えに本来の意味が犠牲になってしまう可能性も上がります。
英語訳聖書の比較・分類
既存の英語訳聖書を逐語訳、意訳、パラフレーズ訳に分類すると、大まかなところで以下のようになります(かなり大雑把ですが、下に行くほど言い換えの度合いが大きくなり、読みやすさが上がります)。2
- 逐語訳:
- King James Version (KJV)
- New King James Version (NKJV)
- New American Standard Bible (NASB)
- Holman Christian Standard Bible (HCSB)
- Revised Standard Version (RSV)
- New Revised Standard Version (NRSV)
- English Standard Version (ESV)
- 意訳:
- New International Version (NIV)
- New American Bible (NAB)
- New Jerusalem Bible (NJB)
- Good News Bible (GNB)
- Revised English Bible (REB)
- Jerusalem Bible (JB)
- New Living Translation (NLT)
- パラフレーズ訳:
- New English Bible (NEB)
- Living Bible (LB)
- The Message
上記の一覧をみて
と思われた方は多いと思います。が、実はまだこれら以外にも英語の聖書はあるのですが、キリがありませんので上記のものに限らせていただきます。3
ちなみに、私が個人的に持っている(最近はあまり使っていないものも含む)聖書はNKJV, NRSV, ESV, NIV, The Messageです。
おすすめの英語訳聖書
それでは、私がどの聖書をお薦めするかですが、正直、英語とキリスト教に対する熱の入れ方の違いでおススメは変わってきます。
であれば、個人的には
をお薦めします。
が、その読みやすさは英語がネイティブの人にとっての読みやすさですので、日本人にとっては返って読みにくいと感じるかもしれません。
でも、ある意味、英語の小説を読むような感じで聖書を読むことができますので、英語の勉強には最適の一冊です。
に対して、個人的にお薦めするのは
NRSVには、カトリックの聖書(正典)には含まれていてプロテスタントの聖書(正典)には含まれていないApocrypha(聖書外典または第二正典)が入っているものもありますので、キリスト教の学びを(英語で)志す人には必携と言えるかもしれません。
にお薦めしたいのは、以下の英語訳聖書です。
ちなみに、上記でおススメした4つの英語訳聖書(The Message, NKJV, NRSV, NIV)は
なお、
と思われる方には、以下のバイリンガル聖書がおススメです。
上記のバイリンガル聖書(第二版)は、英語がNIV(2011年改訂版)で日本語は新改訳(第三版)です。
なお、日本語の新改訳聖書は2017年に最新の翻訳(新改訳 2017)が出ています。最新の日本語訳と英語のバイリンガル聖書としては以下のものがあります(2024年6月時点)。
日本語が新共同訳で英語がNIVのものは無さそうでしたが(2024年6月時点)、新共同訳とESVの対訳・対照聖書はありました。
以上、ご参考まで。
参考文献および注釈
- Fee, Gordon D., and Douglas Stuart. How to Read the Bible for All Its Worth. Fourth edition. Grand Rapids, Mich.: Zondervan, 2014.Gordon D. Fee, Douglas Stuart, Zondervan; Fouth Edition (2014/6/24)
- 詳細は下記を参照。Gordon D. Fee and Douglas Stuart, How to Read the Bible for All Its Worth, Fourth edition. (Grand Rapids, Mich.: Zondervan, 2014), 44.
- Gordon D. Fee and Douglas Stuart, How to Read the Bible for All Its Worth, Fourth edition. (Grand Rapids, Mich.: Zondervan, 2014), 45.
- 参考まで、下記のオンラインサイトで無料で参照できる英語訳聖書の数は63個です(2024年6月時点)。https://www.biblegateway.com/versions/