聖書は本当に信頼できるの?「原本」は失われていないの?どこまで正確なの?

この記事では、
聖書は信頼できる書物か?

という問いに対して、

聖書の写本(手写しされた文書)がどのように伝わってきたか?
写本にはどんな誤りが入りうるか?

そして

現存する写本の量と質からどれだけ原文に近づけるか?

という視点から考えます。

なお、この記事は、過去に掲載した下記の記事の内容から要点を抽出して、キリスト教のことをよく知らない人やキリスト教初心者の方にも分かりやすいかたちになるように、簡潔に要約したダイジェスト版(まとめ)です(内容を加筆修正しているところもあります)。

聖書は信頼できる書物か?②―聖書の信憑性:原本保存の精度(写本の信頼性)―
「聖書は信頼できる書物か」について考える三部作シリーズの二つ目。2000-3000年ほど前に書かれた「古典」としての聖書。その内容は、他の古典作品と比べて、どれほど正確に今日まで伝えられているのか、信頼に足るものか。聖書の信憑性に迫ります。

興味を持たれた方は是非、上記の記事もご一読ください。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告

原本と写本の関係性

まず最初に、

そもそものところ、現代の私たちは、聖書が書かれた当時の原本(オリジナルの本文)を手に入れることができるのか?

という問いがあると思います。

古代には現代と違って「紙」が普及しておらず、パピルスや羊皮紙、木簡など傷みやすい素材に書かれていました。

物は時間とともに劣化するので、最初に書かれた

原本(オリジナルの本文)はまず残りません。

聖書も例外ではありません。

従って、残念ながら、

聖書の原本は現在、私たちの手元にはありません。

そこで重要なのが

写本

です。

原本が劣化すると写本を作り、その写本もまた後世に写される

という繰り返しで、原文が現在に至るまで伝わってきました。

しかしながら、印刷技術も複写機もなかった古代・中世には、すべて手書きで文章を写していったため、写す人のミスや意図的な変更が生じる可能性があります。

このため、

聖書の言葉・内容が、最初に書かれた当時から現在に至る前での間にどれだけ忠実に保存されてきたか?どこまで正確か?

が問題となります。

写本に入り得るミスと善意による直し

写本は人が一文字ずつ手で書き写すため、無意識のミスが必ず発生します。

代表的なものは:

  • 重字脱落(繰り返しが抜ける)
  • 重複複写(同じ箇所が重なる)
  • 記憶違い(似た表現を思い出して間違う)
  • 脚韻による脱落(同じ語尾に挟まれた部分が抜ける)
  • 類似文字の混同
  • 注釈を本文に取り込んでしまう

などです。また、

文法や分かりにくい表現を訂正したり、

神学的に理解しやすく改めたりといった、

善意による「直し」もあります。

原本保存・再現のための比較材料の重要性

写本にはこのような無意識のミスや善意による直しが存在するため、「原本(作者が書いたそのままの本文)」を完全に保存して現在に届ける、即ち、

原本を現代に再現することは非常に難しい

ことと言えます。

そこで重要になるのが、

現存する写本の「量(数)」と「質(どれだけ正確に写されたか)」

です。

たくさんの異なる写本が残っていれば、どこに差異があるか比べることができ、「より原本に近い」本文を探し出すことが可能になります。

写本の質は「誰が、どこで、どの文化圏で写したか」に影響されます。

「質」の異なる写本を比べることによって、原文に近づくことが可能になります。

なお、写本の「質」の違いを系統立てて分析するためには、現存する写本の数がある程度多くなければなりません(聖書以外の古文書では、そもそも、「質」の違いを比べられるほど写本の数が多くないと思われます)。

聖書写本の数・年代・タイプ

聖書(特に新約聖書)における写本の量と比較対象の豊富さは、他の古典文書と比べて圧倒的

なものと言えます。実際、

新約聖書では現存写本数が5,000点以上に達し、最古の写本と原本との隔たり(年数差)は数十年程度

です。

対して、ホメロスや古代ローマの作品は、写本数が数百から1800点程度とずっと少なく、最古の写本と原本との隔たりは少なくて100年、長いものでは1000年ほどになります。

最古の写本と原本との隔たりが少ないほど、その写本の内容は原本により近いものと考えられます。

従って、そうした写本を用いて再現された文書の信頼度・信憑性は高くなります。

旧約聖書では紀元前3世紀ごろから紀元1世紀にわたって数種類の写本タイプがみられ、やがてマソラ本文の原型が支配的になりました。

そして、紀元100年から300年にかけて写本の厳密化(写本筆写者たちによる標準化)が進みました。

結果として、現代の私たちが手にする

旧約聖書には、原文との食い違いがあったとしても、大きな意味を変えるものはごく一部に限られる

と評価されています。

新約聖書の写本では、時代ごと・地域ごとに特徴的な本文(text)タイプが現れます。代表的なものとして、「アレクサンドリア式本文(原文に忠実に残そうとしたとされる)」、「西洋式本文(自由に改変が見られる)」および「ビザンチン式本文(洗練された文体で書かれた)」があります。

特徴の異なるこれらの写本を比べることで、原文に限りなく近づくことが可能になります。

まとめ

聖書の原本(オリジナルの本文)は残っていませんが、それは聖書に限らず、古典全般に共通する事情でもあります。

また、人の手で書き写すことによる誤りや善意の訂正は確かに存在します。

けれども、

聖書は写本の数が非常に多く、系統比較ができるため、原文に非常に近いテキストを再構築・再現することができる

と考えられます。結果的に、

聖書の本文は信頼に足るレベルで保存されていて、その信頼性・信憑性は非常に高い

と言えます。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告